ハスクバーナでジムカーナ!

モトジムカーナに参戦しています。
10年度最終戦でB級昇格を決めたDR-Z400SMからハスクバーナSM450Rに乗換てA級を狙っています。

マシンを改造したりセッティングしたり、乗り方を工夫したりする話。
大会でのリザルトと動画が話題の中心です。
モトジムカーナ全般の話もします。

想定する主な読者はハスクSM450Rやモトジムカーナに興味がある方、すでに参戦を始めているジムカーナ選手です。

関東だけでも7台以上、全国合わせれば二桁にまで増えてきたジムカーナ仕様のハスクですが、ジムカーナDRZの元祖のHPのような情報が未だにありません。
これからハスクに乗り換えてみようと思う方やセッティングなどで悩んでいる方と情報共有していける内容になればと思います。

2013年9月27日金曜日

プロダクションレースタイヤとジムカーナ

(少なくとも関東公式戦の)二輪ジムカーナで使えるタイヤには「公道走行可能」というレギュレーションによる縛りがあります。
このためスリックタイヤは使えません。レインタイヤもほぼ使えません。
例外的に12インチにはミニバイクレース用なのに何故か公道走行可能なレーシングレインがあって、ミニバイク勢は雨の大会を日々心待ちにし、待つだけではなく雨乞いの日々を送っています。

さて一般的な17インチのスポーツバイクがジムカーナでタイムを狙うとどうなるか?
ジムカーナはオンロードレースなのでグリップが必要です。
そして走行時間は長くて2分。2ヒート合わせても4分というスプリントレースという次元ではないスプリントっぷり。つまりライフは気にせず、目いっぱいソフトなタイヤを使えます。
それでいながら公道を合法走行可能となると結果としてST600で使われているようなプロダクションレースタイヤを選ぶことになります。

ST600も「クローズドコース専用の溝付きタイヤ」というわけのわからないものですが、プロダクションレース=市販車レース=公道でみんなが乗ってるバイクですよって建前があります。
みんなが乗ってるバイク、にはエンジンやフレームはもちろん、タイヤも含まれます。
しかし当然ながらレース参加者はもちろん、タイヤメーカーもコンペで参加する以上は有利なタイヤを使います。

するとタイヤメーカーは公道用の車検に合格するギリギリのランド比率(溝の少なさ)で、レース仕様の温度依存しまくりコンパウンド、レース仕様のラウンド(傾らかではなく尖った形状)というタイヤを開発するわけです。
これには車検場のおっちゃんも苦笑いという感じのこの種のタイヤは、モデルによる特性差はあるものの極端な温度依存性やウェットグリップでまったくもって公道走行に向いていません。
タイヤメーカーもPL法が怖いので、こんなタイヤで公道を走ってもらいたくはありません。
そこでホームページ等にこんなオドロオドロシイ文句が並びます。

SPORTMAX GP Unbeaten-02N 使用上の注意必ずお守り下さい。

しかも購入時にはレースに使う旨の書類にサインが必要。(国産タイヤの場合)
全身全霊で「公道で使うタイヤじゃねーゾ!」と伝えてきてくれてます。

しかしながらST600で使う以上、公式にはこんな質疑が残るわけです
ユーザー「このタイヤは公道走行可能ですか?」
メーカー「レース用ですので推奨いたしません」
ユーザー「推奨うんぬんではなくて、法的に可能かどうかは?」
メーカー「使用可能です・・・」

公的機関(車検場、ひいては行政)も一流企業のメーカーも、公道走行可能とするこのレースタイヤがジムカーナ選手の餌食になります。

現在はトップ選手はもちろん最下位シードのC2であっても非プロダクションレースタイヤは皆無。
自走選手も多く、まったくの初心者も含むはずのノービスクラスにあっても70%以上がプロダクションレースタイヤを使用しています。

例外はだいたい以下に絞られます。
①本当に初心者で最初から付いているタイヤや普通のお店で「一番グリップの良いタイヤ」を注文してα13あたりを履いている選手
②12インチバイクでBT601SSのようなレースタイヤを履いている選手
③ノービスでコストを優先して39SSやTT900のようなハイグリップバイアスを履く選手
39SSがまっとうなタイヤと思うなら、それはそれでどうかと思いますので、実質まともなのは①のみ。

ちなみに直近のダンロップ杯のエントリーリストがこちら。
HPに公開されるリザルトからは何故かタイヤとオイルがなくなるので、タイヤとオイルが載るエントリーリストをネットで見ることはまずないのではないかと思います。

最下位シードのC2、ノービス(上側が女性限定のNL、下が男性のNO)、上位シードのA、B(上がB、下がA)の順です。




ダンロップ杯だからか、タイヤ自体の良さからかダンロップのアンビートンシリーズが人気です。
またピレリのディアブロスーパーコルサも大人気。
こちらはリアに150、160サイズを履くマシンが多い中で、ピレリのみが150、160のハイグリップタイヤを販売しているためです。
数年前まではメッツラーのレンスポルトが150、160を出していたのでこちらも人気でした。



このようにジムカーナのタイヤ=プロダクションレースタイヤと言える状況です。
私が始めた7年前はここまで極端ではなく、ノービスならプロダクションタイヤを使うのは良い所2割くらい、トップ勢でも39SSが何人もいる状態でした。

自走マシンで参加できる敷居の低さがジムカーナの美点なので、この現状に疑問を呈する声は常に聞かれます。

さてここに来て「ST600のタイヤ指定が変わるらしい」という噂が流れています。
CBRカップもα13指定ですし、非常にありそうな話です。

これはジムカーナにとっても影響が大きそうです。
実質的にST600があるからプロダクションレースタイヤという合法(脱法)ドラック的なタイヤが存在しています。
ST600がα13指定になれば、流通はほぼ止まると思われます。

するとジムカーナはどうなるか?
これを期にジムカーナでもタイヤのレギュレーションを変えていきたい、という意見もあります。


色々考えはありますが、難しい部分が出てきそうなので列挙してみます。
根本にはジムカーナマシンはナンバーさえ取れれば何でもOKがあります。

①銘柄指定(α13など)
17インチ勢はいいとして、指定された銘柄にサイズがないマシンはどうするのか?
参加不可はありえないと思います。
新車でバイクを買ってもタイヤを指定銘柄に変えない限り参加できないというもの敷居を上げてしまいます。

②各インチ事に銘柄指定
インチ毎の有利不利が今までと違う形で出てきそうです。
またタイヤのモデルチェンジのタイミングが異なるため、指定銘柄の管理が非常に大変そうです。
市販タイヤだと新銘柄が出て半年位で旧銘柄は流通しなくなるし、指定切り替わったからと言って多くの選手は即座に旧タイヤを捨てるわけにも行きません。
一旦指定した銘柄は存続、という事にすると、新銘柄がハズレだった時に旧銘柄を在庫していた選手が有利になったり、旧銘柄を金の力で買い占める作戦がとれます。
実際、過去にBT002からBT003に移行した際に、003が不評でなんと2年分もの002を溜め込んでいた選手が有利になった事がありました。

③現状のまま
国内の一般市場での国産プロダクションタイヤの流通はなくなっていくと思います。
しかし海外にはあります。
ピレリディアブロスーパーコルサやメッツラーレーステックを正規輸入してくれている現状が維持されれば、今とあまり変わらないかもしれません。
問題はサーキットユースが激減した事で正規輸入が止まった場合です。
レギュレーションが許す以上、個人輸入してでも有利なタイヤを使う選手が必ず出てきます。
過去には正規に入らなかったピレリディアブロスーパーコルサのSC0を個人輸入して使った選手がいます。
少なくとも私なら個人輸入してでもスーパーコルサを入れます。
一般タイヤのハイグリップだとBT003STやα13になりますが、2~3%はタイムダウンするはずです。

個人輸入となると金も手間もかかる上、納期が見えにくいのでバッファとして在庫を厚くする事になります。
かなりの参戦コストアップが予想されますが、あえて露悪趣味で言えば、金を出せない選手が脱落してくれる分、出せる私は有利になります。
ジムカーナ的にはなってほしくない状況でしょう。

④レース用タイヤを禁止する
レース用タイヤの定義が難しい。現状のプロダクションタイヤが「クローズドコース専用の溝付きタイヤ」という鵺なのも、建前は公道用だからです。
これをレースタイヤと言うならCBRカップで使っているα13はどうなんだ?になります。
ピレリに至ってはレース使用の申請書もいりませんし、レース用とする根拠が難しい。

⑤いっそスリック含めてレースタイヤ解禁
ジムカーナの大人の事情で実質無理なのは知っています。
が、大人の事情を無視してもキツイでしょう。
以前練習用にレーシングスリックのディアブロスーパーバイクを使ったことがありますが、特に有利とも思いませんでした。プロダクションタイヤが流通しなくなったら代替に使うかなってレベルです。
自走勢が使えない上、トランポ組にとってもタイム的な有利差がない。
レーシングレインは安全性も上がって大歓迎ですが、これも自走組の不利が際立ちます。
安全面を考えてレーシングレイン解禁は希望しますけどね・・・期待薄。


いろいろ否定面を書き連ねましたが、マシンはなんでもアリ、が根本原因で、このなんでもアリな部分がジムカーナのおもしろさでもあるので、これという皆が納得して幸せになれるルールは難しいなと思います。

私見では、17インチが大勢を占めているので17インチのみα13(および純正出荷時装着タイヤ)指定などはありかなと思います。
現状17インチに対抗できるのは12インチ勢ですが、これは上位シードでは数台しかいない上、トップが3%タイムダウンしてやっと互角レベルです。
12インチ勢が増える可能性はありますが、劇的な変化はなく、主力の17インチ勢の参戦コストがやや下がり、自走組の安全性が大幅に上がる事になると思います。